旅と暮らしのはざまで

ー新しい風景に出会い、豊かな暮らしを発見するー

トリッカーズのカントリーブーツと歩く時間

きょうの道具紹介

英国王室御用達を意味する「ロイヤルワラント」。その称号を授かったブランドの小物を少しずつ集めるのが私の密かな楽しみの一つだったりする。長く、誠実に、一つの形を守り続けてきたものだけが持つ独特の正しさのようなもの。それを身に纏うことは自分自身の背筋を少しだけ伸ばしてくれる気がする。

そんな想いから一生モノの靴を探し始めたとき、辿り着いたのはトリッカーズのカントリーブーツだった。

カラーはエイコン・アンティーク。 正直に言えばブラックやマロンの方がどんな服にも合わせやすく使い勝手が良いのは分かっていた。けれど、あえてこの鮮やかなどんぐり色を選んだ。なぜなら、これこそがトリッカーズというブランドを象徴する色であり、私がこの靴に求めたロマンそのものだったから。

便利さや効率だけを考えるならもっと現代的な靴はいくらでもある。 それでも1829年から続くその伝統を、このエイコンという色を通して味わいたいと思った。

きょうは、私の旅の足元を支え、共に時を刻んでいるトリッカーズのカントリーブーツについて綴ってみたいと思う。

道具のひとコマ

重さと確かな一歩

初めて箱から取り出して手に持った時の衝撃は今でも忘れられない。 「⋯⋯重い」 思わず独り言が漏れたほどだった。それまで履いていたスニーカーや仕事用の軽い革靴とは明らかに別種の存在感。足を通してみてもその重厚感は変わらない。まるでおもりをつけて歩いているような、不思議な感覚だった。

ただ、実際に外へと踏み出してみてその評価は一変することになった。 トリッカーズ特有の頑丈なソールは見た目に反して驚くほどクッション性に優れていた。確かに重い。一日歩けば足にはそれなりの疲労が溜まる。けれど、不思議なことに足の裏への痛みは長時間歩いても全く起きなかった。

地面の凹凸をしっかりと抑え込み、一歩一歩を確実に地面へと伝える。 その力強さを知ってからこの重さを頼もしさとして受け入れられるようになった。

秋を歩くための色

この靴が最も輝く季節は間違いなく秋だと思う。 エイコンというカラーは秋の深まりと共にその魅力を増していく。

嵐山の紅葉の落ち葉の上を歩くとき。あるいは奈良公園で色づいた木々の間を抜けるとき。足元のエイコンが散り敷かれた落ち葉や木々の色味と溶け合い、何とも言えない情緒を醸し出す。

愛車を走らせてたどり着いた旅先で、車を降りて最初の一歩を刻む瞬間。ファインダー越しに足元が写り込むたび、その可愛さと格好良さが同居した佇まいに、一人で小さく満足してしまう。

しっかりとした作りのカントリーブーツは、初詣のような少し背筋を伸ばしたい行事にもよく似合う。冷えた冬の空気の中でカチッと紐を締め上げる。その行為が冬の儀式になっている。

馴染んでいく時間の集積

手に入れた当初は「この重さで一日中歩くなんて到底無理だ」と本気で思っていた。 けれど、月日が流れるにつれて歩き方はこの靴に最適化され、靴の側もまた足の形を覚えてくれた。エイコンの鮮やかなオレンジは少しずつ落ち着きを増し、深みのある飴色へと変化し始めている。

かつては恐る恐る履き出していたこの靴も、今では2泊3日の旅行にだってガシガシ履いていく最高のパートナーになった。 硬かった革が柔らかくなり、足の動きに寄り添うようになるまでの過程。見た目だけに惚れて購入したモノが時と共に欠かせない存在へと変化していく。とても贅沢な経験だった。

旅先で感じたこと

この靴は歩くのを楽しくしてくれる。そんな感覚がある。可愛いエイコンアンティークの色味も、かっこよさと可愛さを兼ね備えたそのデザインも、足をしっかりと守ってくれる安心感も。どれもこれもが歩くという当然の動作を楽しくしてくれているように感じる。

そんな靴だからこそ、特別な日や旅行へ履いて行きたくなる。一歩を踏み出したくなる靴、それが素直に感じたこの靴の評価。

いいところ

一番の魅力はやはり「自分に自信を与えてくれる」という点に尽きる。 これを履いているときは、どんな知らない道を歩いていても、どんなに不安を感じるシチュエーションでも不思議と不安がない。ロイヤルワラントの称号を背負った靴を履いているという心持ちが、歩幅を広く、歩みを力強くしてくれる。

また、長距離を歩いても足が痛くならない剛健さは旅の質を大きく変えてくれた。 疲れるけれど痛くない。それは旅を最後まで自分の足で楽しむために何より重要なスペックだと思う。

惜しいところ

唯一の、そして最大の難点は脱ぎ履き。 ブーツの紐を一つずつ解き、また丁寧に括り上げる。その手間は正直に言えば非常に面倒臭い。 だから平日の慌ただしい朝にこの靴を選ぶことはまずない。けれど、その面倒臭さこそが良いと思う。旅に出る前に玄関できつく紐を結ぶ。その儀式が日常から旅へと気持ちを切り替えるスイッチになっている。

そっと置いとく、豆知識

メンテナンスで面倒を楽しめる

旅から帰宅した後の夜、じっくりとこの靴を磨く。 道中でついた土を落とし、クリームを入れ、ブラッシングをする。明るいエイコンの色味は手入れ次第で表情を大きく変える。 面倒と思いながらも手を動かすたびに靴に艶が戻り、旅の記憶が蘇る。

この手間を愛せるかどうか。 それがトリッカーズという靴と長く付き合っていけるかどうかの唯一の境界線なのかもしれない。私は面倒なことが嫌いだけど、この時間は好きだったりする。

エイコン・アンティークの正体

トリッカーズのエイコンは使い込むほどにアンティークのような風合いが増していくらしい。 最初は少し派手に感じるかもしれないけれど、数年、十数年経ったとき、この色がどのような変化を見せてくれるのか。それを想像するだけでこれからもこの靴と共に歩んでいく理由としては十分すぎる。

次の旅へのおとも予想

便利なスニーカーでもなく、脱ぎ履きしやすいローファーでもない。 それでも大切な友人との再会や、カメラを持ってのドライブ、そして心待ちにしていた旅行のとき、決まってこのカントリーブーツを玄関に用意する。

紐を括る僅かな時間。自分の中に「旅人」としての覚悟を宿す。 この靴は他のどの道具よりも、人生の大切な瞬間を一番近くで見守り続けてくれると思う。「道具は長く使う。そして育てる」 その言葉を体現するこのブーツは、これからも足元で新しい風景を一緒に見つめてくれるはず。

次にこの靴と歩くのは、旅をすると決めた寒い日の朝。 雪の気配を感じながら、また力強く一歩を踏み出そうと思う。

この道具をもっと知りたい人へ

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